『ビッチはお嫌い?』
●1
「ランちゃん、ご指名だよ」
「はぁい」
某繁華街の片隅にある風俗店『ネージュ』。店で一番の売れっ子『ラン』こと花園有紀は気だるげな返事を返し、個室へ向かった。
小麦色に焼けたすらりとした体躯に、たっぷりとした豊満な胸と尻。むき出しの肩にかかる金髪はゆるやかに巻かれている。
有紀は個室へ行き、軽く準備をして客を待った。
長くは待たなかった。部屋の扉が開いて客が入ってくる。
いつもの手順、いつもの挨拶。
「こんにちは~♥ ランです、今日はよろしくお願いしまぁす♥」
「……」
媚をふくんだ有紀の挨拶に、『客』は最初無反応だった。
「あっ……」
しかし、彼女が思わず言葉を詰まらせてまばたきすると、向こうもほぼ同時にぎょっとしたような顔になった。
なぜなら――。
「啓人くん、だよねぇ?」
「花園さん……」
お互いに名前を呼んで、硬直する。
彼――辻啓人が彼女の名前を覚えていたのは、意外だった。
辻啓人はかつて、彼女のクラスメイトだった。
勉強ができ、品行方正で、容姿端麗。まさに優等生と言った部類の少年で、クラスの女子の間では人気があった。多少無口すぎるきらいはあるものの、そこが騒がしい男子より好ましいと受け取られていたからだ。
もちろん何度も色んな女生徒から告白されたらしい。しかし、彼はそのどれも相手にせず、とうとう特定の相手を作らないまま卒業を迎え、そのまま名門大学へと進学していった。
要するに孤高の堅物として有名だったのだ。
一方、有紀も童貞狩りが趣味のギャルとして悪名を馳せており、ある意味で有名であった。
だから彼が有紀の名前を覚えていたとしても不思議ではない。しかし高校三年間を通して何回誘惑しても――彼女はこの優等生に興味があったので、たびたび直接的な誘惑を行っていた――驚くほど動じず、それどころか存在をスルーされるのが常だったので、てっきり名前を覚えているとは思わなかったのだ。
つまり、彼が彼女に言葉を返したのは、今ここ、風俗店での個室でのことがはじめてということになる。
啓人は有紀の存在を認めると、驚愕の顔になった。いくら遊び人で有名だったと言っても、同級生が風俗嬢になっていたら誰でもこんな顔をするだろう、という顔だ。
が、すぐに見慣れた無表情を取り戻し、落ち着いた口調で堅苦しく言った。
「久しぶりですね。こんなところで会うなんて」
そして、有紀がなにか口を挟む前に早口で続けた。
「なにもしなくて結構です」
「……はいぃ? どういうこと?」
意味がわからず、有紀は眉をひそめた。
「僕がここに来たのは、サークルの先輩に無理やり連れてこられたからです。社会勉強だとかなんとか……君だって僕が選んだんじゃなくて、お任せ指名です」
なにもしなくていい? 社会勉強? 無理やり連れてこられた?
ややあって、彼女はようやく事情を飲み込んだ。
「要するに、フーゾクには自分の意思できたわけじゃないってことなの?」
「こんなところに、僕が自分から来るはずがないでしょう」
確かにそう言われれば、そう言う気もする。啓人はやや口調を和らげ、説得するような調子になった。
「だから、なにもしなくていいですよ。時間いっぱいまでほっといてください。そっちの方が花園さんも楽でしょう」
「……」
風俗嬢の仕事は『肉体労働』だ。だから、彼の言い分も一理ある。しかし、有紀にとってセックスはスポーツのようなもので、この仕事は趣味の延長線上にあるのも間違いない。
(なにより、啓人くんとエッチしてみたかったんだよねぇ……ずーっと♥)
今まではいくら誘惑しても無視されていた。だが、これはチャンスではないだろうか?
有紀はにっこりと笑った。
「でもさ、お金は払ったわけでしょ……? せっかくだから楽しんでいったら? 同級生だし、サービスするよ?」
啓人の表情が硬くなるのがわかった。
「いえ、結構です」
「いいからいいから。減るもんじゃないんだし、ね♥ 洗ってあげるからお風呂に入ろうかぁ」
「……」
前かがみになって薄着の胸元を見せ付けると、スッと目を逸らす啓人。高校時代からまったく変わらないそのしぐさに、クスリと笑ってしまうほどだ。
(たいていの男は目の前に据え膳があればやっちゃうんだけどなぁ。しかも、お金はもう払っちゃってるんだし。ここまで意志が固いのは珍しいというかなんというか……ヘン?)
彼女からすると、珍しいというよりは『異様』なように思われた。学校でのことはともかく、ここは風俗店だ。嬢の方からここまで言ってもかたくななのには、なにかわけでもあるのだろうか?
「……あ、もしかして啓人くん、女の子とするのはじめて?」
みるみるうちに啓人の表情が強張った。
どうやら、正解だったようだ。
「なんだぁ♥ 大丈夫大丈夫、怖くないよ。むしろはじめてのコ好きだし♥」
「別に怖がってなんか……」
「あ、そう? じゃあ問題ないよね、しよ♥ お金払った分気持ちよくなって帰ろう~♥」
「あ、ちょ、ちょっと……」
反論する隙を与えず、彼女は彼の腕を引っ張って浴室へと連れて行く。力いっぱい振り払うわけにもいかないのか、啓人は困惑した様子で弱弱しく「やめてください」と言うのみだった。
●2
啓人の抵抗はわずかだったので、服を脱がすことには成功した。
しかし、勝手にズボンの前を開けたところ啓人が自分で脱ぐと言い出し、脱いだと思ったらすばやくタオルで局部を隠してしまったために、肝心の部分はまだ見ていない。
風呂場は狭苦しかった。マットを引いて、そこに寝るように指示する。
「じゃ、ここに寝てね」
「何度も言うけど、花園さん。僕はこんなことはしたくないんです。迷惑だ」
彼は極力有紀から目をそらしながら、そう答えた。彼女が全裸だったからである。すらりとしていながら、出るところはきちんと出た抜群の肢体はたいていの男の視線を惹き付けてやまないが、彼は例外のようだ。
「裸になっておいてそれはないんじゃない? それとも……やっぱり童貞だから女が怖いのぉ?」
「……」
「ちゃんと洗わないと、ね♥」
どうやらキーワードは『童貞』のようだ。啓人はどちらかというとプライドの高い男なので、そうした直接的な侮蔑の表現には弱いらしかった。
もっとも、有紀は童貞であることを恥ずべきことだとは思っていない。むしろ、彼女は何も知らない男を自分の身体の虜にするのが好きでたまらなかった。
啓人が憤然とマットに横たわった。
それを横目で確認しながら、石鹸で手を泡まみれにしていく。そのまま彼の身体に手をかけると、慌てたように彼が口を開いた。
「……まさか素手で洗うんですか?」
「なに言ってるの? ここじゃこうやって洗うのは常識だよ。それに、タオルよりずっと気持ちいいから」
「気持ちよくなくていいんです!」
啓人の制止を無視し、有紀はたっぷりとした泡で彼の全身を洗い始めた。それは繊細なマッサージと言っていい。やせてはいるが案外しっかりした肩や胸を撫で回すように通り過ぎ、下腹部の筋肉をさする。
タオルに隠された『そこ』は、さすがというべきか、まだ反応していないようだ。
「ここも洗うよ?」
「そこは、いいです」
かたくなな声があがって、啓人がさっと彼女の腕をつかむ。有紀はにんまりと笑って彼に顔を近づけた。
「あ、やっぱり童貞だから恥ずかしい? 大丈夫だよ、私の噂、知ってたよね♥ 童貞狩り……あれ、本当なの。私、童貞好きだから心配しないで」
「……」
童貞童貞と繰り返され、むっとしたように彼は口をつぐんだ。
「それに、洗わないでするつもりじゃないでしょ? ちゃんと洗おうね♥」
「……好きにしてください」
ぶすっと、ふてくされたような返事があった。
有紀は彼の気が変わる前に、さっさとタオルを剥ぎ取った。
勃起していないペニスがあらわれる。彼女はそっとそれを手にとった。啓人の身体が一瞬強張ったが、それ以上の反応はしめさない。
有紀はたっぷりとした泡でそれをつつみこんだ。最初は優しく、触れるか触れないかのタッチで幹を中心にさすっていく。時折裏筋に指をすべらせ、ぬるぬるの石鹸の力を借りて柔らかく亀頭を撫でる。
ペニスが熱を持つのに、さほど時間はかからなかった。
標準サイズのように見えたそれが、みるみるうちに膨れ上がっていく。完全に勃起しきってはいないようだが、それでも立派なサイズだった。
「へぇー……おっきいんだぁ♥ これ使ったことないの、もったいないよぉ」
「……」
もはやなんと言葉を返したらいいのかわからないのか、啓人は困惑した気まずい表情で黙り込んでいる。
石鹸ですべらせるようになんども優しくこすりながら、有紀は彼の上にまたがった。まるで、これから『挿入する』といわんばかりの態勢だ。彼女の方も全裸であり、そうしたければそうできる、そういう姿勢だった。
啓人のペニスがびくりと反応する。彼の理性がなんと言っているかはさておき、本能の方は間違いなく期待していた。
有紀はそのまま腰を落とし――秘部の表面を押し付けた。そのまま焦らすように腰をくねらせる。ペニスをこすりあげるように。
「びっくりした? 入れるわけじゃなくて、ここで洗ってあげるだけだから、大丈夫♥ ぬるぬるして、気持ちいいでしょ? いっぱい洗おうね」
「うあっ……」
啓人の口から小さな悲鳴がもれて、彼女は満足した。
「どう、私のおまんこ♥ あったかくて、肉厚で、最高でしょ? 中はもっとスゴいよぉ……はやく入れたくなってきたでしょ?」
彼女のそこもまた、期待に昂ぶって愛液を大量に分泌していた。啓人のペニスの圧迫感と熱さが否が応にも有紀を煽る。
(なにも知らない顔して、すっごいちんぽ♥ 絶対気持ちいいよねぇ)
ずりずりと、何度も往復を繰り返す。入り口に引っかかり、ぎりぎりのところで入らずに外へすべる亀頭。このまま入れたくなってしまうが、まだだ。
有紀は気のすむまで『洗った』あと、彼の上からどいてシャワーを手にとった。啓人がのろのろと起き上がろうとするのを制して、泡を洗い流してやる。
それが済んだあと、彼女はようやく言った。
「それじゃ、一度外にでよっか」
●3
風呂からあがった啓人の身体を足元まで拭き終わったところで彼を見上げると、ほとほと困ったような表情が目に入ってきた。
「花園さん。本当に、もういいですから……もう満足でしょう」
どこか疲れたような台詞に、思わずぷっと噴き出してしまう。
「でも、ココはそう言ってないよ? ビンビンじゃん。一度出さないと、身体に悪いよ……♥」
「それは……」
実際、彼のペニスは屹立し、ほとんど腹にぴったりとくっついていた。血管の脈打つ太くて長いそれを、有紀は惚れ惚れと眺める。
啓人は戸惑っているようだったが、最終的にはこう言った。
「それは生理的な反応ですから。僕だって性欲ぐらいはありますし、別におかしいことじゃないでしょう。それと僕の意志は別のものなんです」
ぶすっと、不本意そうだった。
(それにしても、おいしそう……)
一方、有紀は啓人の弁明を欠片も聞いておらず、目の前のペニスに見入っていた。てかてかと光を跳ね返す亀頭、たくましいサオ、パンパンに張った玉袋。どれをとっても生唾モノと言っていい。
湧き上がる衝動を抑えきれず――むしろ抑える理由もなく――、彼女は唐突にペニスにしゃぶりついた。
「ちょっ、ちょっと、なにを!?」
「じゅるるぅぅっ♥ んじゅるっ、じゅるぅっ……♥」
音を立ててペニスを奥まで飲み込む。喉の奥をふさぐその感覚がたまらず、彼女はゆっくりと、再び下品な音を立ててそれを吐き出した。
「んぢゅるぅぅぅーーーっ……ぷはぁっ……思った通り、おいしいぃ」
「やめてください。ああっ……」
「んじゅるぅぅっ……じゅるっ、ちゅぱぁっ、じゅるるっ♥」
反射的に腰を引こうとする啓人の尻をつかんで、抱え込むように顔をうずめる。長大なものが喉にずるずると入り込んでいった。鼻に抜ける独特のにおいが彼女に眩暈を起こさせる。
(これこれぇ……♥ 太くて長くて、さいこぉ……啓人くんのちんぽもっとほしくなっちゃう♥)
まだ有紀が高校生だったころ、彼女が啓人に興味を持っていたのは、彼の顔が好きだとか、性格が好きだとか、そういうことではなかった――もちろん顔も性格も別に嫌いではなかったが――。
彼があの顔で、あの性格でどんなセックスをするかに興味があったからだ。彼のペニスがどんな形をしていてどのぐらいの長さなのかに興味があったからだ。
今のところすべては『合格』といえた。彼女の好奇心と期待を見事に満たして、それ以上のものを見せてくれていた。
次第に激しく頭を上下させていく。唾液が空気と交じり合って、ずぼずぼと下品な音を立てた。
啓人はほとんどあっけにとられていたがかろうじて声を上げるのは我慢しているようだった。しかし、彼が自分ではどうしようもない快楽に襲われているのははっきりと見て取れる。
「じゅるっ♥ じゅっぼ♥ ぢゅるるぅぅぅーっ♥」
有紀は唇をすぼめ、頬全体でペニスに吸い付いた。舌をはみださせながら何度も顔を往復させる。
そのたびに口の中でペニスが脈動し、跳ね、喉をつくのがわかった。
(ふふふっ、童貞のクセに耐えてるねぇ♥)
彼女のテクニックにかかれば、口に含んだ時点ですぐに爆発していてもおかしくはない。が、啓人はぎりぎりのところで射精をこらえていた。
(それも、ここまでだけどね♥)
「じゅるるるぅぅぅーーーっ!」
彼女はきつくペニスを吸った。唇と頬がぴったりと密着し、男根全体を締め付ける。まるで、直接精子を吸い上げようとでもするかのように。
「あああっ!」
当然、啓人はそれに耐えられなかった。彼が身体を震わせた次の瞬間、彼女の口内に大量の白濁液が流れ込んでくる。粘っこく喉に絡みつくそれが彼女の口や鼻からも逆流する。
「んぶぶぅぅぅっ♥ んぐっ、んっ……♥」
濃厚な味わいに眩暈を覚えながら、彼女は喉を鳴らしてそれを味わい、飲み込んだ。
長く続いた射精が終わる。最後の一滴まできちんと絞りつくしてから、ちゅぽん、と彼女はペニスから口を離した。
「ふふふ……超おいしかったぁ♥ でも、もっとできるよね? まだここ、がっちがちだもんね♥」
「……もう好きにしてください……」
あきらめたのか、啓人が力なくつぶやいた。有紀の指摘どおり、彼のペニスは今なお硬くそそり立っている。
もちろん、彼女は彼の言うとおり、好きにすることにした。
●4
「じゃ、入れるね♥」
啓人を横たわらせて、その上にまたがる。彼女の呼吸は期待でわずかに上ずっていた。
彼は先ほど降伏の旗をあげてからは黙って言いなりになっていたが、有紀が上になって秘所にペニスの先端を当てたところで、我にかえったようだ。
「花園さん。コンドームは……?」
「ああ」
部屋にはもちろん、避妊具が用意してあった。しかし、彼のペニスはいわゆる生のままである。
「生でいいよね?」
「えっ、でも、それはまずいでしょ。いくらなんでも……うっ!」
ずぬぅ……!
先端がわずかに沈み込む。
「あぁ……♥ 同級生だから、サービス♥」
「サービスって問題じゃ……あああっ!」
「んんんっ♥」
ずぶんっ!
一気に腰が落ちて、啓人の腹に密着する。
(アッ♥ い、いいっ……♥ おくまで、とどいてるぅ……♥)
有紀は唇を食いしばり、半ば白目を剥いた。
「うああっ!」
啓人の悲鳴があがった。
びゅるるっるるるるぅっ!
次の瞬間、彼女の胎内におさまっていたペニスが跳ね、大量の精液が放たれたのがわかった。どくどくと注がれる生ザーメンに、有紀の背筋をゾクゾクとしたものが駆け上がる。
「はぁぁ……♥ もう出ちゃったの……? いっぱい生出ししちゃったねぇ♥ ンッ♥ あっ、まだ出てる、あ、あ……♥ わかる? 今ちんぽの先端にちゅっちゅしてるのが、子宮口……そこに直接出てるう♥」
「だ、だからコンドームをって……!」
この場に第三者がいれば、男女が逆転したかのような会話に皮肉を感じただろう。しかしどちらも行為に没頭しており、そのことには気づかなかった。
「んっ……あっ♥ はぁっ、はぁっ……まだかたい……もっとできるよね? ね? あぁっ、あっ♥」
「ううっ……! 好きにしろって言ったからって、本当に好き勝手するやつがあるか……?」
有紀が腰をゆすると、ぐちゃぐちゃという音とともに、溢れたザーメンが二人の間で糸を引いた。啓人も口ではあれこれと言いながら、快楽に心を奪われているのは明らかだった――その証拠に口で言う以上の抵抗は一切しないのだから。
「あっ、あぁぁっ……♥ んあっ、あっ、いいっ、おくきもちいぃっ♥」
「……はぁっ、はぁっ……」
上になって腰をゆする有紀。啓人はしばらくはされるがままになっていたが、やがて、彼女の腰をつかんで自ら姿勢を入れ替えた。
「あっ……なに? あれ、もしかして……自分で腰ふっちゃう?」
「もうなんでもいいから、好きにさせてもらいます……」
「好きにしちゃっていいよぉ♥」
有紀を押し倒し、足を開かせる。本能なのか、童貞の割には妙に手馴れていた。
そのまま、激しいピストンが開始された。
「んあっ♥ アッ♥ んあ゛っ♥ あ゛っ! おぉっ!」
ぱんぱんぱんぱん!
肌と肌が打ち合わせる激しい音が響き始める。
(なにこれっ♥ ヤバイッ♥ 童貞丸出しの超ピストンッ♥ めちゃくちゃに奥突いてきてっ……これやばい、やばいよぉっ♥)
「おっう♥ お゛♥ いぐっ……これイグッ♥ イックッ!」
有紀の頭は真っ白に塗りつぶされ、身体が勝手に痙攣を始めた。
「くっ、中、締め付けてきてますよっ」
啓人のつぶやきも、彼女の耳にはとどかなかった。奥をつかれるたびに湧き上がるすさまじい快感に、完全に理性は吹き飛び、ペニスをむさぼることしか考えられなかった。
(啓人くんのちんぽ最高ぉっ♥ ヤバイよ、こんなのドハマリしちゃうでしょぉ♥ 高校のときこのちんぽに会ってたら絶対やばかったっ♥ このちんぽしか目に入らなくなっちゃうちんぽだよぉっ♥)
いわゆる『ビッチ』の彼女は、身体の相性というものが確実に存在することを知っていた。
つまり、啓人のペニスは彼女にぴったりなのだ。今まで会ったどの男よりも、気持ちよかった。
目の前がちかちかと明滅する。
「いぐいぐいぐっ♥ いぐっ……いぐぅっ、いっちゃうっ、いっちゃうっ♥ いぐっ……いぐぅぅぅぅーーーーーっっ♥」
「ああっ……!」
びゅぐるるるるるぅぅーーーっ!
有紀の絶頂と同時に、ペニスが内部で跳ね上がる。三度目の射精とは思えないほどの大量のザーメンが、彼女の最奥に流し込まれるのがわかった。
「あっ♥ あっ、あっ……♥」
彼女の意識は、一度そこで途切れた。
●5
「それじゃ、また来てねぇ」
「二度と来るわけないでしょ」
有紀の挨拶を憮然と流し、啓人は帰っていった。
ことがすべて終わったあと、彼はいたく恥じ入っているようで、むっつりと黙り込んだままでいた。
(だけど、電話番号とラインアドはゲットしちゃったんだなぁ♥)
おそらく、見かけよりも啓人は混乱していたのだろう。押せ押せで連絡先をおねだりしたところ、最終的には『勝手にしてください』とスマホを投げてよこしたのだ。彼が普段どおりであれば、冷たく突っぱねられて終わっていたに違いない。
もちろん、彼女は勝手にすることにして、すばやく連絡先を確保した。
(問題は、この連絡先を使ってなにをするか、だよねぇ……)
決まった彼氏は持たないことにしている『ビッチ』は、考えをめぐらせた。
これからどうするか、まだなにも考えていない。
しかし、近いうちに啓人に連絡をすることになるだろう、と彼女にはわかっていた。彼は会いたがらないだろうともわかっていた。
でも、結局会うことになるのもわかっていたし、その先になにがあるかも、有紀には大体わかっていた。