『灰と黒の忍』
【 序章 】
高層ビル、都会に乱立するコンクリートの柱達はその腹の中に様々な肉塊を抱え無表情なまま十色の人生を無言で見つめる…。
東京駅中心部からさほど遠くない一等地、家賃で車が買えそうな高級ビルディング、セレブリティー達が毎夜怪しげなパーティでも催してそうな…一戸建てをそのまま平面に並べたような所謂億ション的な佇まいの一室にその女は立ちすくんでいる。
その女は下半身も顕に微動だにせずただ仁王立ちで足元を見つめていた。
月夜が差し込む大きな窓、丸みを帯びたまだ幼さの残る臀部が月明かりで薄ぼんやりと照らされ赤みがかかった皮膚を妖艶に映し出している。
女「ふぅ…うっ…また…随分流し込んでくれた…わね…」
女の内股、太ももには女壺からどろりと流れ出る明らかに精液と解る液体がとめどなく流れ滴っていた。
そして視線の先に横たわるのは齢七十は過ぎようとしている老齢の男、全身をはだけ、その一物は怒張しビクビクと脈打ち紅玉は腫れ上がりまるで破裂寸前の水風船のようだった。
老人「はぁ…うっ…まだ…もう一度、頼む、その…その体、その肉壷でわしの…おおぉ…」
女「ふっ…あんた…もう自分が死ぬって解ってるんだね…だけど残念だったね、別にあんたの為に性行為に至った訳じゃぁ無いんだ…ふふ…」
老人「あぁ…頼む…うぅ、あの快感を…もう一度…あぁ」
女「脳も快楽物質まみれで会話も理解できなくなってきたみたいだね」
女は腰に下げた小さな革袋から和紙を取り出すと内股に垂れ下がる精液を拭き取ると鼻をかんだティッシュを捨てるがごとく、クルクルと丸めて無造作に部屋へ投げ捨てると透き通るような美声で小さく呟いた。
女「私が満足したいだけなんだよ…お爺さん?あんたの最後の頼み…聞けないね…ふふふ、あっはははっ!」
老人「あぁぁ、破裂しそうじゃ…なのに…手も、足も、体が動かんっ!」
老人は脈打つ肉棒と吐き出したい快感に手足が感覚もなく石の様に強固に動かない自分の体と理不尽な仕打ちに怒りと憤りを感じていた。
自慰行為に至ってでも自らを鎮めなければ狂い死にそうな程の興奮状態に老人は次第に白目を向き口の箸から泡を噴出し始めた。
女は至極冷静に、沈着にその様子を見届けながら脱ぎ捨てていたスパッツを履くとカラカラと窓を開ける。
高層ビルから吹き込む空気は少し肌寒かったが夜中にも関わらずの夜景、眠らない街にふさわしい色とりどりの光が女の顔を浮かび上がらせていた。
老人「そんな…若い、美しい…こんな…、孫にもま…う…かっ…く」
女「…あら、お褒めに預かり光栄だわ…ふふ…」
捨て台詞の様に振り返ることも無く、手すりに手をかけるとふわりと浮いた体を軽やかに裁き、目も眩む高さの高層ビルから飛び降りる様に姿を消した。
部屋には風が吹き込みカーテンが小さく揺れていたが、物音は一切しなくなっていた。
もの言わぬ老人の体は静かに熱を奪いながら…眠気に勝てない赤子の様に目が閉じていく、すでに女の姿は無く全身をはだけた肌からは生きている証拠であるはずの赤みが失われていく。
老人はかすかな女の残り香と一時の絶頂、快楽の深海へと誘われた夢の様なめくるめく快感を反芻しながら己の「死」を確実に感じ取っていた。
老人「死…死ぬ……わ…私が…この…わ……」
事切れた老人が最後に残した言葉。
老人「く…く…くノ…一?なの…か、…」
その様な装束、見るからに時代錯誤な風体、鎖帷子のような肌着、上着は灰色か濃い紺色か、背中には短刀の様なものも。
太もも露わにスパッツが見え、草鞋履きのような履物、詳しくは見えなかったが強烈な印象を与えた女の正体は老人にとって差程重要なことではなかった。
脳裏と体と、全身に刻み込まれたのは絶対の快感、頭の天辺から指先、足の先端までを全て感覚器官にされたかのような状態で行為に及び、七十過ぎの体が激しく呼応し忘れていた己の肉棒にみなぎる血液、吐き出される無限の白濁液に歓喜の雄叫びを上げたあの一瞬。
老人「…」
女が去った何分後だろうか、老人は完全に息を引き取る。
何故女は老人と行為に至ったのか、老人の死亡と女の目論見は、関係は…。
翌日のTVニュースは各局この事件?とも事故ともつかぬ奇怪な出来事をトップで報じた。
キャスター「えぇ、で、ですね、副総理である風間武雄氏が自宅で倒れていたということなんですよね」
評論家「そうなんですねぇ…しかし…衣服がはだけてその…おほん…えっ、下半身を露出したままと…うほん…言うのもなにか…こう」
キャスター「そこですね、以前から愛人関係には噂がありましたが、その愛人というのも外国籍の女性が多かったと言う話が…」
評論家「推測の粋を出ませんが、某国からのスパイ…つまりハニートラップだったのではないかと、内閣調査室も証拠がために入っていて…、その筋の話によると物証が揃いつつあるとか…詳しくは…その、あれですが」
キャスター「殺人、要は口封じと言う可能性も…ですか?」
評論家「いやいや、早計に結論は…控えさせてもらいますが…可能性は…」
60インチの大型モニターから聞こえてくる朝のニュース。
午前八時少し前、マンションの八階3LDKの南側にある広々とした部屋、少し開いた大きな窓からは清々しい空気が流れ込み朝日が燦々と差し込んでいる。
立地条件から家賃は相当な値が張るであろう一室でトーストにバターを塗りながら寝ぼけ眼で画面を見つめる十代半ばの美少女が一人。
「へぇ…あのじじぃ…副総理だったんだ…っけ?あれ…そういえばそんな事書いてあった…あふぇ?」
もふもふとトーストをかじり続けながらスムージーに手を伸ばしゴクリと喉を鳴らしながら膨らませた頬をしぼませていく。
「やっばっ!遅刻する…」
少女は通学カバンとスポーツバッグを抱えると足早に玄関へと向かう。
広々としたリビングにしては装飾品や家具が少ないが一般家庭には不釣り合いな豪華さと華やかさ、気品のある作りでまして一人住まいの少女が買い揃える高級品でもないと思える様な代物が。
「あっ、…メールチェックしないと…」
リビングの中央、ガラス細工が施されているローテーブルに似つかわしくない型落ちのノートパソコンは電源が入りっぱなしで画面はメールの送受信画面になっていた。
「ふん、しょぼい金額…一億…六千万?…はっ、舐められてるね…私」
少女は何がしかからの送金通知をチェック、銀行口座とその残高を確認するや不貞腐れた表情で部屋を出た。
「あっ、八時過ぎた…」
マンションを出た少女は腕時計をちら見するや最寄り駅へと走り出す。
彼女の名は武天綾美(むてあやみ)十七歳、来年に受験を控えた極々普通の高校生に見える、都内の一等地に住居を構えているが一人暮らしだ。
生活費、通学、遊興費その他は自分で稼いでいる、勿論その手法は同級、クラスメイト達には一切知られていない。
現代に残る最後の暗殺業、依頼があれば動機、理由を問わず確実に証拠を残さず隠密に事を遂行する掃除人。
灰の忍者。
闇の家業に平成の世を生きるJKくノ一のある日常。
【 第一章 】
女子A「あっ、おはよーあやちゃん今日もギリね(笑」
綾美「言うなって…色々とあんのよ…」
女子B「でもさ、あやちゃん週明けいつもギリだよね?流石学年トップレベルは勉強も忙しいって?」
綾美「まっ…んまぁね、今の時期からレベル上げてやっておかないとさ、うち厳しいから」
女子B「だろうねぇ~じゃなきゃ一人暮らしなんて許してもらえないよ」
女子A「お金持ちの家は放任主義と見せかけて自己監理が当然で平凡を許さないって感じなんだね」
綾美「いやぁ、まぁ…そう…まぁそういうことで」
当然全て作り話、照れ笑いをしながらその場を取り繕う綾美のでっち上げた妄想家族の内情だ。
クラスでは人気者、女子からも悪い噂が立たない男子からはマドンナ的な存在である綾美の暗黒面を知る者は皆無だ。
程なく始業ベルが鳴り響き担任がHRを始める、男性教諭は淡々と月例行事や連絡事項、委員会の連絡を終えるとさして生徒と会話を挟むこともなく教室を後にした。
一限目が始まる数分前に綾美のスマートホンに着信が入る。
綾美は一瞥すると口端を微妙に釣り上げ聞こえない程度に舌打ちをした。
綾美『ちっ…スマホに連絡は入れるなと言ってあるのに…県(あがた)め…』
県と言う男からの不躾な連絡に綾美は至極不機嫌だ。
女子B「…?どうしたのあやちゃん…もう授業始まるよ?」
綾美「あっ、あぁ、ちょっと朝から腹痛でさ、ちょっと保健室いって薬もらってくるって言っておいてくれる?」
女子C「大丈夫?ついてってあげようか?!」
綾美「いや、大丈夫、マジちょい腹痛だからさ」
椅子を立つと素早くスマホを袖の内側に滑り込ませ教室を出る。
早足で廊下を進み階段脇を曲がると階下の掃除用具のスペース、まず授業中に人は来ない場所でスマホを取り出し県に連絡を取る。
綾美「…県か、お前、学校に直で入れるなんて度胸あるな」
県『いやいや、綾さん…そこは穏便に…例の副総理の件、ちと厄介な事に…』
綾美「聞けないね、私がやるのは殺(さつ)まで、以後は知らないよ?毎回そういう契約になって…そうだ、お前、振り込みの玉(ぎょく)の数、最初の話と違うね」
県『あれは口止と手回し代を引いてあるんですって、今回は思った程聞き分けが良くない仲介が入ってしまってですね、その』
綾美「殺すよ?」
県『いっ、そんなっ!勘弁して下さいよ、綾さんが言うと冗談に聞こえない…』
綾美「県、私が一番嫌いな事って何か知ってるか?」
県『…な…なんでしょう…か…』
綾美「冗談と嘘だ」
通話越しに聞こえる男の声は終始震え、怯えた様な声だ。
新人営業が得意先の不手際で謝罪の連絡を入れているような、低姿勢に拍車がかかった様な弁解に終始した会話になっていた。
綾美「早くしな、要件は…もう授業始まってるんだよ」
県『すっすみません、側近の箱入れ(暗殺)です、どうにも依頼人からは証拠の一部が見つからないと、それが無視できない内容とか…手に入れる必要は無く、側近だけをという事です』
綾美「…はぁ…もうジジィは飽きたね、なかなか”立たない”んだよ連中、私の体を満足させられる物を持ってる奴が欲しいね…」
県『それは、その…綾さん程の名器をお持ちの方を満足させる事が出来る男はそうそう…』
綾美「お前、馬鹿にしてるだろ、マジ殺すぞ」
県『違いますってっ!本題ですが、今日明日中にという緊急の依頼です、詳細はメールで送りました必要な道具などは揃えておきましたから…』
今にも泣き出しそうな声で懇願する男は一応の連絡を終えると通話を切った。
綾美はヤレヤレと肩を落としスマホを握りしめたが同時にニヤリと口の端がつり上がった。
先日の情事、老人との性行為に今一の満足感を得ていなかった綾美は若干体の火照りを残している事を否定できなかった。
『ちっ…まぁ…確かに物足りなかったし、あの肉棒は硬さも太さも…やべ…思い出したら…濡れて…』
授業は始まっている、人気の無い掃除用具置き場は完全な死角になっていて階段から降りてくる気配だけ気にしていれば気づかれることはまずない、綾美はその場で手慰みを始めてしまった。
「うっ…ふっ…県の…野郎、だから連絡するなって言ってあるんだ、思い出しちゃう…からぁ…あっ」
下着の中に滑り込ませた指は肉布を捻り巻くと乱暴な指さばきで上下左右へとねじりあげられる。
ひとしきり苛め抜いた後は指を三本垂直に立てると躊躇なくヌルヌルと勢いとどまらず肉壷の奥へ滑りこませていく。
授業開始のベルから十数分、自慰行為にふける綾美は優等生とはかけ離れた破廉恥行為に身をくねらせる。
教室に戻った綾美は同級生に赤みがかった頬や吐息が荒い事などを指摘され体の変調を心配されたが薬を貰ったから大丈夫と誤魔化して事なきを得る。
終業のベルが鳴ると手早く教科書などをしまいこんだ綾美は挨拶もそこそこに学校を出ると最寄り駅へ小走りに、一目散に自宅へと向かった。
時間は午後四時半を少し回った所か…。
「はぁはぁ…ったく、毎度の事ながら…」
息を弾ませながら…しかしその呼吸には余裕があり走ってきたとは思えないほどの息使いである。
開け放してある勉強部屋に荷物を放り投げるとリビングに置いてあるパソコンに目を通す、新着メールは二通だ。
「誰だ?…県以外からのメールなんて、初めてだ…あいつが万が一アドレスを漏らしているようなら…消すしか…無い…けど…」
綾美の口からは今時の女子高生が口癖にするような「マジ」や「やばくね」などの言葉と同様に軽く「殺す」や「死」という言葉が用意に溢れる。
それは比喩や誇張では無く「実行」の概念に基づく行動へ直結する信じがたい言動だ。
そして県からのメールを確認した綾美はメールの差出人に愕然とする。
「…花蝶円心(かちょうえんしん)…だと?」
内容に何も記載が無い事も手伝ってか額に小さく現れる汗は帰宅時に走った運動でのものではない、明らかに冷や汗と取れる緊張に基づくものだ。
綾美は生唾を飲み込むとキッチンへと立つ。
業務用と見間違う程に大きい冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ビールを取り出すとおもむろに口へ運び半分ほどを一気に流し込んだ、勿論未成年者にアルコールは法律違反だ…が。
「ぷっふぅ…、やばいな…まっ、まだ時間はある、今夜の仕事が終わったら…対策を練るとして…」
綾美は残った中身も気にせず缶をゴミ箱に投げ捨てると寝室のウォーキングクローゼットに向かう。
中には年頃の華やかな洋服、コート、全て有名ブランド品、バッグ、帽子、靴、棚には貴金属高級腕時計菜が縦横無尽に並び店舗の倉庫を髣髴とさせる量だった。
勿論これは仕事の報酬として受け取った金で買った代物、綾美は裏の仕事で稼いだ金をほぼ遊興費や私欲に注ぎ込んでいた。
「…この指輪も飽きたなぁ…次はグリーンダイヤでも買うかなぁ」
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら手にとった服は灰色がかった短い装束、制服を脱ぎ捨て内側にカーボンや特殊な糸を縫いこんだ頑丈な作りの下着、網状に誂えた衣服は遠目にはまさに帷子に見えた。
装束と同じ色合いのスパッツを履きこんだ太ももは白く筋肉の筋が美しく一流アスリートの様だ。
「六時四十分か…ちと早いが…まっ…」
長くサラリとそよ風にも優しくたなびきそうな黒髪を束ねると目つきも鋭く表情が一変する。
自宅テラスの窓を開けると外は暗闇が訪れる大禍時、この少女は今から人を殺しに行く…理由も、最たる大義も無い、依頼の通りに確実に、完璧に、そして妖艶に…、その容姿からは想像もつかない人外外道の行為に向かうのだ。
対象である副総理の片腕とされる男は予想はしていたであろう、手段と目的に怯えながらもまさかその相手が女子高生であるとは想像も出来なかった。
【 第二章 】
男は安価なビジネスホテルの一室で落ち着かない様子、簡素な椅子の上で膝をカタカタと上下に揺らし親指の爪をキリキリとつまんでは時計と携帯電話の着信を気にしていた。
そして着信音。
「もしもし?おい、話が違うじゃないか、司法取引っていう話があるから…、そんな、今更…おいっ、おいっ!!」
相手のおそらく理不尽に突き放す言葉に怒りと恐怖で頭が混乱していた。
男は意を決した様に椅子から立ち上がると手荷物を方にかけると部屋の鍵と共にチェックアウトの手続きをとフロントへ向かおうとした、その時。
背後、開けた覚えのない窓の方角から風が吹き込む。
「…?、なんで風が…ちっ…面倒くせぇ、早く安全な場所を探さないと、…?!」
後ろを振り向いた男は我が目を疑う。
ポニーテール、光の輪が見えるほどの美しい黒髪、童顔だが鋭い眼光に怪しげな口元、素肌にまとった帷子は下着を付けていない為か、乳房が淫らに見える。
男「きっ、君っ…どっから、って…なっ!」
綾美は無言でスパッツを下ろすと男の目の前で突然、自慰行為を始める。
男は夢なのか、はたまた自分は逃亡生活に精神疲労が重なり既に狂ってしまって…精神病院のベットの上なのではと思考をグルグルと回転させる、目眩にもにた症状が襲い半開きの口は一切閉じることは無かった。
綾美「お前…まっ、合格点だ…な…、どうだ?私と…しないか?…んっ…はぁ、私のここは、何時でもお前のを受け入れる準備は…あっ…」
小さく身悶える少女の自慰行為に目を奪わる男、甘い吐息にも似た言葉に意味不明な合格点を付けられたことには気が回らず、ただただその淫猥な行為に視線を釘付けにされていた。
綾美「どうなんだ?早くしな…いと…私も…我慢の限界が…くる…うふっ…」
男は事情と現状が理解できない、ビルの十二階、入り口には鍵をかけていたので窓が開いているという事実からこの少女はそこから入って来たとしか思えない。
目の前で行われている少女の慰みを見せつけられ自分が組織に、何がしかの機関に狙われているという現実さえも脳裏から剥がれそうな天外な現実。
男は自我を取り戻そうと精一杯に理性の欠片を拾おうと足掻いてみせた。
男「君はぁ!何者だっ…て!兎に角、その卑猥…それを止めたまえっ、見せつける様な物じゃないっ!恥ずかしくないのかっ」
綾美はニヤニヤと薄笑いを浮かべながら答えた。
綾美「うふっふふふ、これは私が私へのご褒美…さっ…仕事だけってのも退屈が重なると、飽きる…刺激…ん、…刺激」
男「そんな、仕事とか意味不明だ!君、若いな、幾つか知らんがさっさと出て行きたまえ!私は君に用事なんか無いんだ、急いでいるんだ」
綾美「いいじゃないか、私の…体に魅力は感じないか?お前も男なら…あぁ…」
男「あっ…うぁ…違う、…俺は早く逃げないと…」
男の呂律が回らなくなっていく。
綾美の自慰行為はただ己の欲望満たすためだけでなく、体に染み込ませてある数種の媚薬を陰部から分泌し、気化させる事で十帖ほどの部屋なら数分でその効果を発揮させることが出来る。
男「なぜ、こんな…」
男は全身が粘度の高い液体に包まれた様な脱力感に襲われていた、その場へへたり込むように膝をつくと体の異変以上に股間の膨らみに目を疑った。
男の下半身は怒張し硬く盛り上がり今にもはち切れそうな程に血流を張り巡らせていた。
痛みすら感じるその勃起具合に男は震えと快感への欲求が瞬時に膨れ上がった。
綾美「どうだ…息苦しいだろう?その肉棒の捌け口は、ここで…ここで晴らす事ができるぞ?…うふふ」
綾美は自らを慰めていた指を股間から離すと薄っすらと生えそろった淫毛に絡みついた淫液を拭い、口元へと運ぶ…、真っ赤な舌を大きく突き出し指をいやらしく舐め上げた瞬間、男の感性は快楽の渦へと巻き込まれていく。
ふらふらと足取りも重く綾美に近寄る男は拙い手つきでズボンを下げようと必死にベルトを鳴らす。
上着もそのままに肉棒だけを取り出そうと小水を我慢しきれずに便所の手前で服を脱ぎ出す様に似た無様な格好はまるで幼稚園児のようだ。
男の息は既に荒く、目は虚ろで額には大粒の汗を流し始めている。
綾美は着ていた装束と特殊素材な帷子を脱ぎ捨てると男の前で己の乳房を揉みしだき始め近寄ってくるのを眺めていた。
歳相応らしからぬ豊満な乳房、汚れを見せない乳首や肌の張り、艶、若さあふれる肉々しい身体に男はむしゃぶりつく。
綾美「ふふふ、そうそう、それが男、本当は欲しかったんだろ?いいぞ…もっと…強く…して、も…あっ、乱暴にしてもぉ…!」
男「んっむっ…んむうぅぅ!」
理性を失い暴走している男の性欲は明確に媚薬の効果だ。
綾美は身体に蓄積させている媚薬を体内で自在に調合し乳首から母乳のように出したり陰部から霧状に霧散させたりすることが出来る、拭った涙を陰茎に塗れば肥大化させその部分だけに触覚を集中させる事ができたり、唾液を口移しにすれば粘膜質を触ればすべて激痛まで敏感に変化させる事もできる。
忍法としての名称があるのだが綾美はその呼称がすべて嫌いだった。
男「なんで、こんな…事を…君は一体いぃい…何者ぉおぉ」
綾美「ふぅ…気にするな…素直に、どうせ、…どうせお前はこれが終わったら…私に、私に」
男「君に、…君、きっ」
綾美「殺されるんだから」
言葉の意味と真意が理解できない、比喩表現だと思い込み、男は一心不乱に綾美の乳房を鷲掴みに先端の赤豆にしゃぶりついていた。
唾液まみれに犯されていく乳房、直立に行為を受け入れる綾美は男を抱え込むとベットの上へと体を倒しこむ。
下から眺める男の行為は散々待たされた食事に飛びつく座敷犬のようだ。
綾美「ほら、…早く…お前の…入れたいんだろ?早く!」
男「うっ…うぅぅ!うぅ!」
男の瞼は半開きだがその眼の奥は血走っていて口もとからは少しずつ涎が滴ってきている。
綾美の体からは全身からでる汗と共に微量ながら常に排出されている、初手に使う忍法と行為の最中でその深遠へと誘うのが一連の流れになっている。
男は自らの肉棒を握り締めると大きく開いた綾美の両足の中央へとにじり寄る、我慢の限界に達している男自身は血管が脈打つ度に痛みと快感とが入り混じった感覚を脳裏へと運び続けていた。
綾美「快楽の園…淫肉の洞窟へ…ようこそ…」
綾美の両手が卑猥で淫靡に濡れた蜜壺を内蔵まで見える様な勢いで左右にこれでもかと押し広げている。
置物の様に待ち構えているM字に開かれた下半身へ男は肉魂を肉壷の入り口へ押し当てるとゆっくりとそして極太に腫れ上がった荒棒を根本までねじ込んでいく…。
今まで感じたことの無い、血液が沸騰しそうな程の快感が全身に走る、脳みそがそのまま溶けてしまうかの如く綾美の淫壷が男の肉棒を怪しく、乱暴にそして淫靡に包み込む。
綾美「…凄い…硬くて…うっ…カリ首の感触が…あぁ…」
男が激しく腰を振り出す。
極限までに血液を充満させた肉棒が妖艶に湿るJKの発育途上にも見える陰部を前後に激しく出入りし始めた。
追われている立場や理解不能な展開、なぜ自分はこの少女と肉体関係にまで陥っているのかを考える余裕などすでに無い男は獣のようにうなりをあげんながらその欲望に正直に貪欲に綾美の肉壷を貪っていた。
男「うっ!ふうぅう、うっ!うぅぅ!」
綾美「はぁっ、あっ…あぁぁ、いいぞ、凄い…久しぶりだっ…いく、いっくっ!」
かたかたと小さな肩を震わせて男の体を抱きしめる、覆い被さるように綾美の上で一心不乱に腰を振り続ける男は綾美の絶頂と共に男自身の咆哮を上げる。
全裸で見ず知らずの男に抱きつかれ汚濁液を流し込まれる綾美は一見すると援助交際、男の乱れた服装からはまるで強姦にあっているかのような見た目だ。
しかし少女は脈打つ音が聞こえてきそうな肉塊を秘部に包み込むと本能のまま吐き出される精液を歓喜に体を震わせながら心地よく、さも愛さているかのような表情で受け応えた。
綾美「くうぅ…出てる…流れこんでくるのが…分かる…うぅ…熱い」
男「うぁ…っく、…出る…なんでだ、…いくらでも出るぞぉ…あぁ、快感がぁ…収まらないいぃいぃ、気が、気が狂いそうだぁあぁ、ああぁ!」
綾美の秘部は綾美が絶頂に達すると内分泌された物質が精液と混ざり、成分だけが男の鈴口から尿道をたどり腹部、神経と筋肉や感覚器官を犯し快楽のみを最優先に脳へと信号を送るような全身性感帯の様な体に相手を変化させることが出来る。
何秒、いや何分程精液を吐き出し続けたであろうか、正常位に抱きつき流れ作業の機械が如く腰を振り続けていた男の体は全身にシワが走り始めまるで老人の様な体つきになっていく、にも関わらず男は男根の抜き差しを激しく続けている。
男「とっ…止めてくれえぇ…快感が…全く…おさまらない…、あぁ…出る…また…くうぅ、こんな気持いぃのはぁ、ああぁ…」
綾美「うぅふっ…いいぞぉ…出せ、もっとだ、もっとよこせ、お前のザーメンを私の中にすべて注ぎ込めえぇ」
男「おおぉぉ!」
歳相応だった腕の筋肉、顔つきや首筋に渡る肌の張りがみるみるうちに病人のような様相に変化する男、歓喜に打ち震え全身を突き刺すように綾美の蜜壺の中で繰り返し刺激される男の肉根は全身の老化現象とは裏腹にその力強さと強固さを保ちつつ、ただただ欲求に応え続ける人間性欲解消器具になっていた。
シングルベッドの上は男の精液が貯まり綾美の股間をもザーメンまみれに。
男のピストン運動が静かに終わり、ピクリとも動かなくなった瞬間、綾美は身をよじりながら男の抱きしめる腕と体を引き剥がす。
ぬるりと綾美の肉壷から抜き出された肉棒は男の意思とは関係無く未だに硬く、彫刻のようにいきり立っている…が、男は薄っすらと目を開けたまま一言も発せずつっぷしたままベットに顔を埋めていた。
綾美「ふぅ…すごい量だなぁ…中年男の性欲って…ふふふ」
綾美は注ぎ込まれた男の汚濁液を秘部から吐き出すため両手を合わせ拳を作り握りこむと肩幅に両足を広げると下半身を力ませた。
綾美「…んっ!」
普通ではありえない、中出しされた精液がボタボタと太ももを伝って吐き出されていく、蝋燭が高熱で瞬時に溶けていく様に似た異様な光景だった。
綾美は滴る汚濁液を何事も無かったかのように、近くにあったティッシュを無造作につかみとると拭きとったゴミもそのまま、無言でスパッツを履き、服装を整え終えた。
綾美「ふぅ…満足満足っと…一応確認しておくか…」
綾美は男の頸動脈に指を添える、脈を打たない…、次に足首の脈も取る、一瞬たりとも微動だにしない「死」を確認すると綾美は窓に向かうと一瞥もくれずその場を後にした。
【 最終章 】
時間は深夜二時を少し回った程…。
自宅に戻った綾美は玄関前で異様な雰囲気を感じ取る。
綾美『誰か…いる…な…』
人の気配を感じ取った綾美は自宅への侵入者に警戒感を高める、鍵穴を除きさらに郵便受けから内部を覗く、万が一対峙しても体術に絶対の自信がある綾美は確認作業だけを大まかにすると無造作に玄関をあけ室内へと足を踏みいれた。
ソファーに陣取る初老の男性、風格がありその服装は格式ある寺の僧侶のような格好だ。
テーブルには湯のみから立つ湯気を見るに勝手に入れたであろうお茶と綾美が買い込んでいる駄菓子が並んでいた。
綾美「誰だ、いい度胸だね、私への復讐かなんか…かな?死にたくなければすぐに出ていきな、今日は至極満足な仕事だったんだ、命は取らないっが…口止めに相応の…?!円叔父…か…、まさか、家までくるなんて…」
円心「綾美か、めぇるとやら見てくれたかな、はっはっは、一言忠告にな、弟も心配しておる、娘が稼いだ金を懐に入れて里には一切送金せず、私欲にふけっているとな!」
綾美「そっ!誰がっ!里にはちゃんと送金してるっ…ます!間違いな…い!…です…」
眼光鋭く綾美の生活を正す様な言動を繰り出す男に綾美は虚勢を張る小型犬の様だ。
円心「聞けばパチンコとやらにも興じているそうだな、ギャンブルに手を出すにははまだ早いのではないかな?若い身空で身を持ち崩す輩は少なくないぞ、そのための淫技ではないであろうに、はっはっは」
綾美「かっ…関係…ないでしょ…稼いだ金をどう使おうが…」
円心「確かに、お前の言葉を信じるならば送金はされているようだな、何か食い違いがあったのやもしれぬ、今一確かめてみよう、まぁ、その様子からして心配事は少なからろう、精進せい」
綾美「いっ…言われなくても…解って…解って…ます」
茶を一気にすすると膝を一度大きく叩きながら立ち上がる円心、長身で体はレスラーの様に胸板が厚くいかつい体つきに似合わず顔はスマートで熟年層の女性には持て囃されそうな整いだ。
円心「でわな」
綾美「…」
返す言葉も無く、玄関から悠々と出て行く叔父の後ろ姿に普段の生活、仕事内容もすべて里や関係者に筒抜けであることを悟る綾美。
表の世界では抜きん出た技術、比較すれば全ての一般人を上回るような能力でも裏の世界の住人では話が違うようだ。
飲み終えた湯のみに食い散らかされた駄菓子を片付けながら綾美はメールをチェックすると仲介人である県からの依頼メール、報酬の振込などにまざって私信が一通混ざっていることに気がついた。
綾美「県…あいつ…知ってやがったな…やっぱ殺す、あいつ…許せんっ!」
県『忘れてましたが報酬着服と豪遊の件、里にばれてました、すみません、円心様が一言言っておきたいって事と様子を見にそちらへ伺うそうです、言い訳とかなんかいろいろ考えておいたほうが良いかもしれません、それでは…ご愁傷様です』
綾美「ああぁがぁたあぁぁ…」
握りしめた湯のみにヒビが入る程の怒りが込み上げる綾美だがさりとてどうすることも出来ないと悟るや掃除に取り掛かると、しばらくしてふと学校の宿題を思い出す。
綾美「あっ、…物理の実験結果レポ…いやいや…なんかもう…ああぁ!もうっ!」
JK忍者の日常は色々と波乱が満ち溢れていそうではある。